家族信託のQ&A
Q1家族信託って認知症になってもできる?
A1)これから家族信託契約をお考えになっているお客様のよくあるご意見として、「自分が認知症になってから契約を考えればいい」という声をお聞きします。
単刀直入に申し上げますと、そもそも家族信託契約は、自身が認知症等の判断能力を喪失する前に、事前に安心して任せられる親族の方(受託者)と契約し、将来的に自身が認知症になった場合に様々な手続等を代行して任せるという仕組みなのです。
従いまして、契約の締結は早ければ早いほど良いですし、一旦認知症の症状が出始めると、判断能力は日に日に失われてしまい、公証役場での契約の締結の際に公証人の先生から、「診断書」を求められるケースも多いようです。
ご相談の際に、既にご自身のお名前も覚えておらず、家族信託が行えなかったお客さまも大変多いです。
昨今はテレビでも特集されるくらいに、一般の方の認知度は上がってきている家族信託ですが、以上から、少しでも興味をお持ちのお客様はお早めに専門家にご相談されることをお薦めします。
Q2遺言を書いておけば家族信託しなくていいの?
A2)遺言が効力を発生するのは、遺言者がお亡くなりになってからです。
従いまして、遺言書内で全ての財産を記載していたとしても、生前に認知症になってしまってから亡くなるまでの間、資産が凍結することになります。
つまり、完全な生前対策とは言い難いのです。
また、家族信託は、全ての財産を信託財産に含める必要はなく、認知症等で資産が凍結される恐れのある「土地・建物」や、「会社の株」など、特定の財産だけを対象にすることが多いです。
こうすることで、生前に認知症になっても信頼できる家族が財産を管理し、資産凍結の恐れは無くなります。
さらに、家族信託で指定した財産については、信託契約書内で「帰属権利者(財産を最終的に取得する方)」を指定するケースがほとんどですので、その部分については遺言書に代わる役割を果たします。
一方で、信託財産として指定しなかった部分の財産については、依然としてご本人様の固有財産のままですので、別途遺言を作成し、財産の承継先を指定する必要があります。
「家族信託」と「遺言」を2つ併せて作成する事で、よりお客様のニーズにあった財産承継が可能になります。
弊所は遺言書作成も併せてお客様のニーズに合ったプランをご提供させて頂きますので、是非お早めにご相談ください。
Q3家族信託を使えば「遺留分」は気にしなくていいの?
A3)結論から言えば、法律上は可能であっても、弊所では実務上遺留分を考慮せずに信託契約を締結するのは難しいとお答えしております。
信託契約締結の際に、受益者に相続が発生するたびにあらかじめ委託者が指定しておいた受益者に順次移転することを決めておき、受益権をいったん委託者に戻るスキームを作っておくことで第一次相続以外は遺留分の権利が発生しないとすることも考えられてはいますが、いまだ裁判所の結論が確定しておりません。
また、家族信託では金融機関で信託口口座を作り、そこに信託財産を移して管理していくことが多いですが、信託口口座を開設するにあたり、金融機関は信託契約書を吟味します。そこで、遺留分を侵害した信託契約であっても、その遺留分権利者に対して手当のできる財産が確保されていることが説明できればいいですが、そうでない限り金融機関は紛争含みになる口座開設に応じてはくれません。
家族信託は長期にわたり継続して効力が生じていく契約です。ひとたび紛争が生じてスキームが停止すると信託契約をめぐる関係者間で思わぬ付随的なトラブルも生じかねません。
従いまして、家族信託契約にあたり、遺留分を侵害する契約をする場合は遺言や保険などを活用して遺留分権利者に対して手当をしながらスキームを立てていくことが必要になります。