相続税の納税方法
相続税の申告期限は、相続の開始から10ケ月以内です。
そして、申告期限までに、原則として現金で納付します。
相続財産が、現金や預貯金だけであれば、相続した財産の中から納税することも出来ます。
しかし、遺産が土地建物など、換金しなければならないものが多い場合もあります。
土地等を換金するには、それなりの時間を要しますし、10ケ月以内にで現金化できるとは限らないのです。
そうした場合の相続税納付として、納付期限を延長して分割払いができる、「延納」の制度があります。
また、相続税を申告期限までに現金で納付するのが難しいときは、「物納」という方法もあります。
それぞれについて以下で解説しておりますので、詳細をご覧ください。
【延滞税・加算税】
相続税における延滞税・加算税
申告した税額に誤りがあった場合や、税務調査により追加の税金を支払うこととなった場合には、追加の本税だけではなく以下の金額も支払わなければなりません。
1)延滞税
納付期限までに納付をしなかった場合には、納付期限から納付した日までの日数に応じ本税の年14.6%(納付期限から2ヶ月以内は年7.3%)を乗じて計算した金額。
2)過少申告加算税
・申告した税額が過少であり、自主的に修正申告書を提出した場合には、過少申告加算税は課税されません。
・申告した税額が過少であり、税務調査により修正申告書を提出した場合には追加で納めることとなった税金に10%(期限内申告の税額と50万円のいずれか大きい金額を超える場合の、その超える部分については15%)を乗じて計算した金額。
3)無申告加算税
・納付すべき税額があるにも関わらず申告書を提出していなかった場合において、自主的に申告書を提出したときは、納付すべき税額の5%を乗じて計算した金額。
・納付すべき税額があるにも関わらず申告書を提出していなかった場合において、税務調査により申告書を提出したときは、納付すべき税額の15%を乗じて計算した金額。
4)重加算税
・財産を仮装・隠蔽等し、過少申告をした場合には、納付すべき税額に35%を乗じて計算した金額。
・財産を仮装・隠蔽等し、無申告だった場合には、納付すべき税額に40%を乗じて計算した金額。
【物納による納税】
納税義務者について相続税額を延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、税務署に申請することにより、一定の要件のもと金銭以外で納付することができます。
また、収納価額は相続税評価額となります。
1)物納に充てることができる財産
1.国債及び地方債、不動産及び船舶
2.社債及び株式並びに証券投資信託又は貸付信託の受益証券
3.動産
※管理処分不適格財産となるものは物納に充てることができません。
2)物納申請期限
物納の許可を受けようとする場合には、相続税の申告期限までに物納申請書、その他関係書類を提出しなければなりません。
【相続税の延納】
納税義務者について、相続税額が10万円を超え、かつ、納付期限までに金銭で一括納付をすることが困難とする事由がある場合には、税務署に申請することにより、一定の要件のもと、一括納付に代えて、年賦延納をすることができます。
1)適用要件
延納の許可を受けようとする場合には、相続税の申告期限までに税務署に延納申請書、担保提供書類を提出しなければなりません。
また、延納税額に相当する担保を税務署に提供しなければなりません。
2)延納期間
延納期間は相続した財産のうち不動産の占める割合によります。
1.不動産の占める割合が50%未満の場合
5年以内
2.不動産の占める割合が50%以上75%未満の場合
a動産に係る延納相続税額・・・10年以内
b不動産に係る延納相続税額・・・15年以内
3.不動産の占める割合が75%以上の場合
a動産に係る延納相続税額・・・10年以内
b不動産に係る延納相続税額・・・20年以内
3)利子税
延納の許可をうけた納税義務者は、相続税の申告期限の翌日から分納税額の納期限までの期間に応じ、一定の割合を乗じて計算した利子税を延納税額とあわせて納付しなければなりません。
【農地等に係る納税猶予】
農業を営んでいた被相続人の相続人が一定の農地を相続または遺贈により取得した場合において、その相続人が申告期限までに農業経営を開始し、その後引き続き農業経営を行う時には、納付すべき相続税額のうち一定額の納税を納税猶予期限まで猶予することができます。
1)手続
この規定を受けようとする場合には、相続税の期限内申告書にこの規定の適用を受ける旨を記載し、必要書類を添付して税務署に提出しなければなりません。
また、納税猶予を受けた相続人は、相続税の申告期限の翌日から3年ごとに農業の継続届出書を税務署に提出しなければなりません。
2)納税猶予期限
納税猶予の規定の適用を受けた農地について以下の場合に該当することとなったときはそれぞれに定める日を納税猶予期限とします。
1.納税猶予額の全部について猶予期限が確定する場合
次に定める日から2ヶ月を経過する日まで
a農地の面積の20%を超える譲渡、転用があった場合・・・その譲渡、転用があった日
b農業経営を廃止した場合・・・廃止した日
c継続届出書の提出がなかった場合・・・届出期限の翌日
2.納税猶予額の一部について猶予期限が確定する場合
次に定める日の翌日から2ヶ月を経過する日まで
a農地について収用交換等があった場合・・・その収用交換等があった日
b農地の面積の20%以下の譲渡、転用があった場合・・・その譲渡、転用があった日
c準農地について、申告期限後10年を経過する日において農業経営が行われていない場合・・・10年を経過する日
d都市営農農地等について生産緑地法による買取の申出があった場合・・・買取の申出があった日
e都市計画の決定・変更により特定市街化区域農地等に該当することとなった場合・・・その該当することとなった日
3.納税猶予額が免除される場合
納税猶予の規定の適用を受けた相続人が以下の場合の該当することとなったときは納税猶予分の相続税は免除されます。
a死亡した場合
b農地等の全部を農業後継者に贈与した場合
c申告期限の翌日から20年間農業経営を継続した場合
3)納税猶予額
農地について、通常の評価をして算出した相続税の総額から農業投資価格を基準として評価をして算出した相続税の総額を控除した金額のうち納税猶予の適用を受ける相続人に係る部分となります。
注意
農業用倉庫を建築している場合にはその敷地とされている部分の納税猶予額は納税猶予の対象とはなりません。