相続税の計算
相続が発生した場合に、自分は相続税を支払う必要があるのか?また、いったいいくらの税金を支払わなければいけないのか?
これは、どんな方でもとても関心の高いところだと思います。
しかしながら、相続税が発生するかの判定は、財産の種類や条件などによって様々で、その計算は非常に複雑になっています。
また、財産が同じでも、相続人の数や構成によって税額は変わります。
こうした相続の複雑さから、税理士の中でも相続の経験があまりない方は、財産評価を積極的に受けない方も居るほどです。
つまり、相続税は『基礎控除を超えた金額に一定の税率をかけて計算する』 というものではなく、基礎控除を超えた金額を法定相続分に分割した上で、それぞれの金額に応じて税額を算出し、その合計金額を納税額の総額とし、実際の相続額の割合に応じて、各相続人に納税義務を課すという手順で計算されるものになっています。
ですので、相続税の計算をする際は、
1)相続人の数と種類
2)相続財産の種類とそれぞれに対する評価
という2つの要素が分からないと計算が出来ないのです。
さらに、その中から「控除」と言われる免税額を考慮に入れて計算することで最終的な納税額が算出されるのです。
ここでは、基本的な相続税の計算方法と相続税の控除についてご説明させていただきます。
詳しくは、以下のページよりご確認ください。
【二割加算・税額控除の説明】
相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額は相続税額にその相続税額の20%の金額を加算した金額となります。
ただし、一親等の血族には孫養子は含まれません。(代襲相続人となっている場合は除かれます。
相続税額の二割加算対象者
・兄弟姉妹
・孫(代襲相続人除く)
・長男の妻
【相続税の各種控除】
1.配偶者控除(配偶者の税額軽減)
1)配偶者が相続する割合が法定相続分以下の場合は相続税はかかりません。
2)配偶者が相続する財産が1億6,000万円以下の場合は相続税はかかりません。
但し、この制度を利用するためには、原則として期限内(10ヶ月以内)に遺産分割協議を完了させて、相続税の申告を済ませておかなければなりませんのでご注意ください。
2.未成年者控除
法定相続人に未成年者がいる場合は、未成年者が20歳に達するまでの年数1年につき、6万円が控除されます。
*相続開始時の年齢が1年未満の端数は1年として計算します。
6万円×(20歳-相続開始時の年齢)=未成年者控除額
3.贈与税控除
贈与税額控除とは、贈与税と相続税の二重課税を防止するために設けられている規定です。相続開始前3年以内の贈与財産は、相続税の対象として加算されますが、贈与税を既に払っている場合には相続税から控除できます。
生前贈与加算の対象となった 財産を取得した年分の贈与税額 |
× | 生前贈与加算財産の価額 ——————————— その年分の贈与財産の価額の合計額 |
1)法定相続人が一般障害者の場合は、対象者の年齢が満70才になるまでの年数1年につき6万円が控除されます。
6万円×(70歳-相続開始時の年齢)=一般障害者控除
2)法定相続人が特別障害者の場合は、対象者の年齢が満70才になるまでの年数1年につき12万円が控除されます。
12万円×(70歳-相続開始時の年齢)=特別障害者控除
*相続開始時の年齢が1年未満の端数は1年として計算します。
4.障害者控除
10年以内に2回以上の相続があった場合に、前回の相続において被相続人に課税された相続税額のうち、前回相続から今回相続までの経過年数1年につき相続税額10%の割合で減額したの残額を今回の相続における相続税額から控除しようとするものです。
5.相次相続控除
相続により取得した財産が国外にある場合、その国外財産について相続税に相当するものが課税されている場合は、二重課税を防止するために国内で相当する税額を相続税額から控除できます。
6.外国税額控除
相続により取得した財産のうちに国外財産があり、その財産につき、日本の相続税に該当する税金が課せられているときは、二重課税を防止するため、日本の相続税額に相当する金額を控除します。
【相続税の計算方法】
1)課税価格の算出
「相続財産の価格」+「みなし相続財産」-「債務・葬式費用の金額」+「(A)相続時精算課税の適用を受けた贈与財産・(B)Aを除く3年以内の贈与財産」
2)課税遺産総額を算出
「課税価格」-「基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)」
3)相続税の総額を算出
「課税遺産総額」×「各人の法定相続割合」×「税率」-「控除額」
※これを相続人ごとに行って合計する。
4)各人の相続税額を算出
「相続税の総額」×「各人のあん分割合(各人の課税価格/課税価格合計)」
5)各人の税額の加算・控除
4)により求めた相続税額に相続税額の加算・各種控除項目を考慮後の金額が納付すべき相続税額となります。
<加算項目>
・税額の2割加算(1親等血族(世襲相続人を含む)配偶者以外の人に適用されます)
<控除項目>
・贈与税額控除
・配偶者の税額軽減
・未成年者控除
・障害者控除
・相次相続控除
・外国税額控除
【相続開始前3年以内の贈与財産】
相続又は遺贈により財産を取得した者は、相続開始前3年以内に贈与により取得した財産があるときは、その財産の価額(相続時精算課税贈与分は除く)を、相続税の計算上、相続財産の価額に足し戻して計算されます。
ただし、3年以内の贈与であっても、相続又は遺贈で財産を取得しなかった場合は足し戻しの対象外となります。
また、暦年課税贈与・相続時精算課税贈与により住宅取得等資金を取得し、住宅取得等資金の特例の適用を受けた場合のその住宅取得等資金の非課税部分についても、対象外となります。
なお、相続人以外の者が死亡保険金を受け取った場合(みなし遺贈の場合)は、その者も生前贈与加算の対象となりますのでご注意ください。
贈与税額控除
贈与により取得した財産で相続税の課税価格の計算上、相続税の課税価格に足し戻されたものについて贈与税があるときは、相続税の価額から控除することができます。
【相続開始後の譲渡】
1)取得費加算の特例
相続により相続財産を取得した者がその相続財産を相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合には、次の算式により計算した金額を譲渡した相続財産の取得費に加算することができます。
1.譲渡した相続財産が土地等である場合
その者の相続税額×その者が相続により取得した全ての土地等の相続税評価額÷その者の債務控除前の相続税の課税価格
2.譲渡した相続財産が土地等以外である場合
その者の相続税額×その者が譲渡する相続財産の相続税評価額÷その者の債務控除前の相続税の課税価格
2)相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例
相続により非上場株式を取得した者がその非上場株式を発行会社に譲渡した場合において、その譲渡価額がその会社の資本金等に対応する部分を超える部分の金額があるときは、その超える部分の金額は配当所得とみなされます。
しかし相続税の申告期限から3年以内における譲渡については配当所得とはみなされず、発行会社への譲渡金額の全額が譲渡所得となります。
また、取得費加算の特例も併用して適用を受けることができます。